ぱぱとままになるまえに

結婚もしたいけど、まずは仕事をやりきる

ひろみ:「ママになりたい」って、ずっと思ってて、でも、自分の年齢と、築いてきたキャリアの間で迷う時期が女性にはあるな、って思ってて…。

島根での仕事は、きっとキャリア的にはおもしろいキャリアが積み上がりそうなのは想定できたと思うけど、でも、けいちゃんの実家は東京で、島根に行くのはなかなか勇気のある選択だったと思うけれど…。

ママになりたかった自分と、キャリアの間らへん。自分の結婚・妊娠・キャリアだったりって、そのあたり、どう思っていたか覚えてる?

けいちゃん:「ママになりたい」って気持ちは持ち続けていたけど、でも、そのために婚活をするとか、そういう感じはなくて…。むしろ、仕事をまだやりきれていない感覚があって、中途半端な状態になっているのを感じていました。

きっと私は、一つひとつやりきらないと次に進んでいけないタイプなんだと思う。だから、26歳で島根に行くという選択に不安もあったけど、これまで自分が積み上げてきたこと、大学で研究していたことを仕事にしたいって想いの方が強くなって。結果、4年間を島根の益田市で過ごすことになりました。

「社会教育コーディネーター」という仕事で、小学校を地域コミュニティの拠点にしていくために置かれた立場でした。空き教室をみんなでリノベーションして、地域交流スペースという場をつくって、生活・総合の授業をはじめ、学校教育の現場に地域の人に関わってもらったり、地域の人の学び場として学校施設を開放したり。

子どもが本物に出会いながら学んでいく環境で、気づいたら地域づくりに子どもが参画しているという場面もごろごろ転がっていて。どれも見逃したくない!と思うほど、おもしろい現場でした。

(社会教育コーディネーターとして働いていたとき)

ひろみ:私もちょうど同じ時期に、夫の仕事の都合で、隣町の津和野町に引っ越して住んでいたんだよね。島根には知っている人が全然いなかったから、けいちゃんの存在は貴重だったなぁ。益田市の現場にも何回か遊びに行かせてもらいました。

さっき「やりきらないと次に進めない」って話があったけど、島根のその次、みたいなことはどう思ってたの?

けいちゃん:大学院修士まで研究をしていたのもあって、「理論と実践の往還、学問と現場の往復をしていたいな」という思いがありました。島根の現場は、まさに大学で研究していたことをそのまま実践できる場でした。

私が学んできた教育学って、「なんのために学校ってあるんだろう?」とか、「子どもはどういう存在として捉えたらいいんだろう?」とか、そういうことで。

教員養成系の大学だと、教科の専門性を身につけることができて、だから先生になっていくことも自然なルートとしてあるんだろうと思うんだけど、教育学を学んできた身としては、「教科の専門性がない」のがコンプレックスで、それじゃ現場で通用しないんじゃないかって自信がなくて、なかなか学校現場には踏み出せずにいました。

でも、社会教育コーディネーターという仕事を通して、教育学が現場で役に立つことを身をもって体験させてもらいました。ひとつでも多くのよりよい実践を!と思ってやり続けたその先に、「実践から理論に還す」という経験もさせてもらえた頃、なんとなく自分の中でやりきった感があって、そろそろ一区切りつけてもいいのかなと考えるようになりました。

その頃に、次に見えてきたのが小学校の先生で。今度は担任として、子どもたちに関わってみたいと思うようになっていったんです。

実を言うと、島根に行くことは留学のようなつもりでいて、いつかは東京に帰ることになるかなとは思っていました。
それに、島根では子どもが生まれたら帰ってくる若い世代の姿や、おじいちゃん・おばあちゃん含めた家族のあり方みたいなものも見させてもらったなという感じがあって、ある程度仕事もやりきったところだったし、そろそろ自分も家族がいるところに戻ろうかなと思うように。

結局すべてがつながっていくんだけど、結婚をリアルに意識し始めたのもその頃だったかも。彼は私にとって、生活をともに楽しくつくっていけそうだなと思える人で。戻ったタイミングで一緒に住み始められるといいなと思って、島根にいるうちからいろいろと段取りしていったかな。

だから、籍を入れてから島根を去ることになったんだけど、お祝いムードの中、送り出していただけたことは本当にありがたかったです。
 
ひろみ:今日の参加者の方でも悩んでいる方がいたけれども、今は「ママになりたい」と思ってもなかなか手放しでなれる社会情勢ではないし、かつ、女の人も仕事するのが当たり前になっている中で、仕事をしている最中に、妊娠・出産・子育てを考えるってすごく難しくて…。
でも、「仕事か子どもか」ってどっちかだけを選ぶのも、もちろん難しい。

選択しきれない中でも、今の社会や時代の状況の中だと、ちょっと策士になる場面も必要だよなって思っていて。
キャリアと妊娠・出産・子育てを一回視野に入れた中で、「なりたい姿」を考えて、そのなりたい姿になるために、頭を使って行動していく部分が必要。けど、流れに身を任せる部分も必要で…。その両方のバランスが大事だよなって思っています。

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