ぱぱとままになるまえに

興味関心を追求することで、自分らしさを持ち続ける

(ここからは、参加者の方からの質問・感想を受けたやりとりをお伝えします。)

参加者:想像していた妊娠期間とか、その後、親になるとか、子育てしていくイメージをしていたものがあると思うのだけれど、今はたぶんギャップがあるんじゃないかなと思うのですが、どんなところでどんなギャップがありましたか?もしあれば聞きたいです。

けいちゃん:ん〜、逆にママになっても特別変わったことはなかったかも。なんか自然です。思い描いていたのと違うな〜とか、ギャップがあるな〜っていう感じでもなく、今すごく普通に生活しています。

「ママになりたい」って言ってきたけど、「よし、ママになるぞ〜!」というよりは、これまでの生活の延長線上に今があって、淡々とやってるって感じ。

参加者:以前から知っているけいちゃんと、あんまり変わらなくて、すごくいいなと感じました。“妊婦さん”とか“お母さん”とか、よくあるイメージ像じゃなくて、けいちゃんのまま、いろんなライフステージを過ごしているんだなと感じました。
私も、これからたぶんいろんなことがあって、大変なことも起きると思うんだけど、同じようにできたらなって思いました。

けいちゃん:「ママになりたい」って言っていたわりには子ども中心にはなっていなくて、むしろこの子はこの子で生きていくのだから、私は私で何か持っておいた方がいいな、と思っています。そうじゃないと自己実現のために子どもを使ってしまうことになりそうで嫌だなと思って。今後は、仕事の復帰も考えています。

ひろみ:妊娠していないときとか、妊婦さんだと「子どもを産み育てる」には、別の人物にならないとできないこと、みたいなに感じたりするのかも。別の人になるみたいなイメージがあって、精神的なハードルがあったり、想像がつかない。そう思いがちで、自分も前はそう思ってたよなぁと思い出しました。

別の人生が始まるみたいな感覚が前はあったけど、自分が親になって6年経って、全然変わってない感じがあるんだよね。中学生くらいから変わってない気がする(笑)

そのあたりはなってみないとわからない感覚だったなぁ。産んで、育ててはいるけど、「お母さんになったなぁ」って常に思ってはいなくて、ただただ小さな別の人がそばにいる生活が始まったっていう感覚。

”変身”して別の人みたいになる人もいるかもしれないけど、変身しないで、ほぼ日常が続いていくっていう、そのあたりのことが「なるまえ」の人に伝わっていくと、精神的な負担とか不安とかなくなるのかも?と聞いていて思いました。


 
参加者:話を聞いていて、「あぁ、けいちゃんらしいな」と感じる部分がたくさんありました。「自分の選択」ができているんだなって。

「自分らしさ」を大切にできるって、すごく強くないとできないことだと思っていて…。自分の子どもや、周りの子どもたちにも、そういう気持ちを大切にしてほしいなって思っているんですが、どういう風にまわりはサポートしたらいいのか、エッセンスのようなものでもいいので、日頃の生活の中などで、けいちゃんが考えていることを教えてほしいです。

けいちゃん:やっぱり、興味関心の追求を大事にすること、かな。
サドベリースクールを研究していたのもあるけど、そうならざるを得ない理由がその人にはあって、だからそういう対応と関わり方をする、と思っていて。

たとえば、子どもとの遊びでも、ダメなこととかやらせちゃいけないことって、実はそんなにないなって思っていて。棚からタオルを全部引っ張り出すとか、やってほしくはないけど(笑)やりたいのならやらせましょう、ってやらせている。汚れちゃダメとかは大人の都合だったりするしね。

子どもも自分自身も大事にしたいし、興味関心をいかに追求していけるのかが大事なんじゃないかなと思っています。

参加者:妊娠がわかってから、ネガティブな情報ばかり入ってくる気がしていて。でも、今日、ちゃんと個人のポジティブな話を聞けるってすごいよかったなって感じました。けいちゃんの話を聞いて、不安に思ってもしょうがないし、なるようになるんだって思えたのでよかったです。
 
ひろみ:やっぱり妊娠ってわからないことが多くて、センシティブな情報が刺さりやすくて…。めっちゃハッピーエンドか、逆にめちゃくちゃバッドエンドか、みたいな壮絶なものが鋭いから刺さってくるから、心が揺れるけど、現実味もないよね。

だから、揺れたり不安に感じたり、そういうときこそ、こうやって身近な人の、いいも悪いもまるっと、ちゃんと、本当の普通の話をじっくり聞ける機会は大切だなって思いました。

参加者:小さくて些細なことだと思われるかもしれないけど、でも、その人が生きてきた経験の中の小さなエピソードや出来事を、直接的に聞けるっていうのは、すごくインパクトがありました。聞いているうちに「一緒に人生を歩んでみた」っていうような感覚さえありました。一部を寄り添わせてもらったような。

キャリアと妊娠・出産を考えたときに、タイミングとか図ったりしちゃうけど、結局引き受けていくしかないって思えたことも、すごいよかったです。

ひろみ:今回、けいちゃんのお話をみんなにも聞いてもらいたいなって思ったのは、妊娠中からいろいろ相談を受けたり、出産の報告をもらって、やっと会えたときにランチをしたんだけど。

そのときに、けいちゃんと、けいちゃんの子ども、二人を目の当たりにして、もしあのときけいちゃんが産まないという選択をしていたらこの景色はないんだなと思うと、人生で初めて「かけがえのなさ」を実感したんだよね。

みんなと一緒にけいちゃんのお話が聞けて本当によかったです。心を開いて話してくれたけいちゃん、参加してくれた皆さん、今日は本当にありがとうございました!

(文:古瀬絵里、西出博美)

ゲスト恵ちゃんの「あとがき」

話す前のこと
学生の頃からの友人だったひろみさんに声をかけてもらい、みなさんの前でお話をさせてもらうことになりました。
育休中だったわたしは、今しかないこの時間を!と、いろんなところへ遊びに出かけ、忙しない日々を過ごしていたのですが、この変化していく日々をもう少し丁寧に残しておけたらな、と思っていた時期でもありました。
そんな折にいただいたお誘いだったので、今しか思い出せない妊娠・出産のあれやこれやを、改めて振り返れる機会にもなるかなと、快く引き受けさせていただきました。

我が子が小さく生まれてきたことをオープンにすることで、この先この子にどんな影響がありうるのか、ほかの誰かを傷つけてしまうことがないか…など、想像しきれていないところもあるような気がしていて、文字として残すことに怖さもありました。
でも、前向きな選択として「今のわたしたち」があることが伝わればいいなと思い、お話させていただくことにしました。

話してみてどうだった?
お話を聞いてくださったみなさんには、重たい話というよりは、軽やかさのある前向きなものとして受け取っていただけていたらうれしいです。

わたしたちにとって、赤ちゃんが小さく生まれてくること、それは医学的にも“原因不明”のできごとでした。何か状況を改善させる対策のしようもなく、お腹の中の子を見守ることしかできませんでした。
でもあの時、自分のことを責めずに済んだという意味では、原因が分からないことに助けられたようにも思います。

誰のせいでも、何のせいでもないこと。そこに自分たちの意識をいたずらに向けてしまうことなくやってこれたことが、「“今”を見つめて、自分たちのできることをささやかでもやっていこう」とする姿勢に繋がっているような気がしています。

たぶん側から見れば、起きていることに見合わないくらい、わたしたちにはお気楽さがあると思います(笑)
でも、“産む”を選択するまでの方が山場だったわたしたちにとって、赤ちゃんが無事に生まれてきてくれた時点でもう「オールOK!」だったんですよね。

裏を返せば、親が子にしてあげられることは限られているということを暗に教えてもらっているような気もします。
生まれてきてからも、うめちゃんは、ゆっくりペースで成長しています。それもまた、親がどうこうできるものではなく、うめちゃん自身のペースで成長していくのを見守って“うめちゃんなりの、その時”を待つしかないのだと思っています。
もしできることがあるとすれば、一緒にいっぱい遊ぶことぐらい。おもちゃを工作してみたり、いろんな場所へ出かけてみたりはしていますが、それもこの子をどうしたいとかそういうものでもありません。むしろ子ども時代を謳歌できるように、この時期特有の世界観が失われないように関われたらいいなと思ってやっています。

ひろみさんが、わたしの話を聞いて、「人生」、「生き様」の文字をメモしたと言っていました。
紆余曲折しているように見えるかもしれないわたしの人生だけど、自分のなかでは、ずーっとまっすぐ歩いてきたんだよな、一本道だったよな、と改めて確認させてもらいました。それから、仕事を続けていく意味も。
ママになりたいとずっと思ってきただけに、その思いを子どもに注ぎすぎると、自分の思いを子どもに反映してしまいそうで危ういな、とも思っています。そうなると、子どもを自分の思い通りにしたくなってしまいそうで…。そうならないためにも、わたしは自分のやるべきことをもっておこう、と思っているので、今は、職場復帰が楽しみです。

次の話し手さんへ
「ぱぱまま」でお話をすることは、嬉しくもあり、楽しみでもありましたが、やっぱり不安もありました。興味をもってもらえるだろうか?役に立つお話ができるだろうか?なんて考え始めたりして…。
でも、べつに大講演会をするわけでもないのだから!と、ちょっと共有するだけのつもりで話してみたら、思いの外みんながポジティブ(?)に受け取ってくれた気がして、共有してよかったなと思えました。

誰かとちょっと分かち合ってみること。それはきっといい時間になるはずです。

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